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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2750号 判決 1950年4月14日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の弁護人榎本九上告趣意について。

臨時物資需給調整法に基いて発せられた、昭和二二年一月二四日閣令、商工、農林、大蔵、内務、文部、厚生運輸、逓信、司法省令第一号指定生産資材割当規則第一一条は、その第一項において「指定生産資材の取引については物価の統制に関する他の法令の規定を適用する」と規定し、その第二項において「前項の法令に違反してなされた行為に対しては臨時物資需給調整法の罰則は、これを適用しない」と規定していることは所論のとおりである。

しかし右規則第一一条は、指定生産資材の取引で物価に関連あるものはその物価に関連ある部面については、物価統制に関する他の法令(例えば物価統制令等)の規定を適用し、その規定に違反した場合には物価統制に関する法令の罰則を適用し、その限度においては臨時物資需給調整法の罰則は、無関係であるとの趣旨を規定したもので、右取引が他面指定生産資材割当規則の規定に違反しても、之を不問に付し、臨時物資需給調整法の罰則の適用を全然排除する趣旨ではないと解すべきである。何となれば、指定生産資材の取引については、臨時物資需給調整法に基いて産業の回復及び振興に関し経済安定本部総裁が定める基本的政策及び計画の実施を確保するため、指定生産資材の生産、割当、配給、使用等を統制するため制定された、前記指定生産資材割当規則の規定が適用され、もしその取引が同規則に違反した場合には、臨時物資需給調整法の罰則が適用されることは事理の当然であって、右取引が一面物価の統制に関する他の法令の規定に違反するからといって右規則の規定並に臨時物資需給調整法の罰則の適用を排除する何等の合理的理由はないからである。従って、指定生産資材の取引が、一面右規則の割当、配給に関する規定に違反すると同時に、他面物価の統制に関する法令の規定に違反するときは、物価統制に関する法令の罰則が適用されるばかりでなく之と共に右規則の規定並に臨時物資需給調整法の罰則の適用されることは論をまたないところである。しかして原判決の確定した事実は被告人は洋家具等木工品の製造を目的とする大和木工有限会社の常務取締役で同会社の業務を執行している者であるが、昭和二三年三月二〇日頃右工場において、自己の会社の業務上使用する目的を以って柿福松を介し莨谷宏から指定生産資材である合板二七〇枚を需要者割当証明書と引換えずに一枚の代金四五円の割合で買受けたものであるというのであるから、右の所為は正に前記指定生産資材割当規則第七条に違反し、臨時物資需給調整法第一条第四条に該当するものである。そして原審が審判の請求を受けた事実は、原判決が確定した前記事実即ち右規則第七条違反の事実であって物価統制に関する法令違反の事実ではないから、原審は、その請求を受けた限度において犯罪の有無を確定処断すれば足り、右取引が他面物価の統制に関する法令に違反するかどうかまで審理する必要はないのである。故に原判決には何等法令の解釈を誤り之を不当に適用した違法もなく又、審理不盡の違法もないので論旨は理由がない。

仍って刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四六条に則り主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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